Seeing The Roots live made me realize how amazing Questlove is.

The Roots Japan Tour 2026のBillboard Live公式告知ビジュアル drum
Billboard Live presents「THE ROOTS Japan Tour 2026」の告知ビジュアル。

グルーヴを支えるドラマー

The Roots Japan Tour 2026。2026年9月1日、Zepp Hanedaにて。
Zepp Hanedaで開催されたThe Roots Japan Tour 2026。約2時間にわたる演奏で、特に印象に残ったのがクエストラブのタイムキープだった。

Zepp Haneda でThe Rootsのライブを観てきました。

とにかく渋かった。

会場は体感で男性が7割くらい。観客のノリも良く、音楽そのものを楽しみに来ている人が多い印象でした。

このライブで自分が一番見たかったのがドラマーのクエストラブです。

実際に生で観て驚いたのは、派手なフィルでも超絶技巧でもありませんでした。

タイムキープです。

MCや長い休憩をほとんど挟まず、約2時間ほぼ叩きっぱなし。それでも、自分が聴いた限りではテンポが大きく崩れる感覚がほとんどありませんでした。

もちろん会場でBPMを計測していたわけではないので、「一切ズレなかった」という意味ではありません。印象に残ったのは、もっと大きな意味での時間です。

最後まで、バンド全体が乗っているグルーヴの芯が消えなかった。

The Rootsは、なぜ生バンドなのか

Zepp Hanedaで開催されたThe Roots Japan Tour 2026のライブ会場
Zepp Hanedaで開催されたThe Roots Japan Tour 2026。約2時間にわたる演奏で、特に印象に残ったのがクエストラブのタイムキープだった。

The Rootsは1980年代後半、フィラデルフィアでラッパーのブラック・ソートとドラマーのクエストラブを中心に始まったヒップホップグループです。

彼らの大きな特徴は、ヒップホップを生バンドで演奏してきたこと。

ヒップホップはDJ、サンプリング、ドラムマシンなどと深く結びつきながら発達してきました。

機械で作られたビートなら、同じ場所に同じ音を何度でも置くことができる。

疲れないし、興奮してテンポが走ることもない。

The Rootsでは、それを人間が演奏します。

クエストラブのドラムを聴いていると、

機械的な反復性と、人間が生み出すグルーヴを同時に成立させる

という、このバンドならではの難しさが見えてきます。

同じビートを維持しているようで、スネアの位置、ハイハットの粒、音量の微妙な差には人間の感覚が残っています。

生で観ると、このバランスが非常によく分かりました。

クエストラブを観ながらピーター・アースキンを思い出した

ライブ中、もう一人思い出したドラマーがいました。

ウェザー・リポートのピーター・アースキンです。

ウェザー・リポートは、ジョー・ザヴィヌルとウェイン・ショーターを中心に結成され、ジャコ・パストリアスらも参加したジャズ・フュージョンを代表するグループ。

ちなみに「ウェザー・リポート」という名前は、『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』に登場する同名のキャラクターで知っている人も多いかもしれません。

『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』に登場するウェザー・リポートの漫画シーン

ジョジョから元ネタとなった音楽へ辿っていくのも面白いところです。

ピーター・アースキンは1970年代後半からウェザー・リポートに参加しました。

彼自身の回想によれば、当時のライブも通常2時間以上、基本的に休憩なし。

今回のThe Rootsを観ながら、この話を思い出しました。

ただし、ピーター・アースキンとクエストラブでは、支えている音楽の性質がかなり違います。

自分なりに分けるなら、

ピーター・アースキンは「変化する時間を支えるドラマー」。

クエストラブは「反復する時間を守るドラマー」。

だと思います。

「変化する時間」と「反復する時間」

ウェザー・リポートの音楽は演奏の中で絶えず形を変えます。

ソロが始まり、ダイナミクスが変化し、その瞬間に他のメンバーが出してきた音へ反応する。ピーター・アースキンは、その変化の中でバンドが帰ってこられる時間を作る。

一方、ヒップホップでは反復そのものが大きな意味を持ちます。

同じビートが続くからこそ、ラップが乗り、ベースが乗り、観客の身体も揺れ続ける。

そこでドラマーが必要以上に変化を加えたり、時間の感覚が崩れたりすれば、ループ特有の気持ちよさまで変わってしまう。

だからクエストラブは、何かを次々に足すというより、

必要なものを壊さず維持する。

ジャズとヒップホップ。

ジャンルも方法も違いますが、二人ともバンド全体が演奏できるベースを作っているように見えます。

そこが自分が二人に惹かれる理由なのかもしれません。

終盤のドラムソロで印象に残った小さな音

今回のライブ終盤には、クエストラブのドラムソロがありました。

それまでバンドを後ろから支えていたクエストラブが、ソロになると非常に小さなハイハットの音まで使い始めました。

大きな音で圧倒するのではなく、小さい音までコントロールして音量の幅を作る。

ドラムというと、

「どれだけ速く叩けるか」

「どれだけ複雑なことができるか」

に目が行きがちですが、

小さく鳴らせることも技術です。

ライブだからこそ、そのダイナミクスがよく分かりました。

The Rootsから、もう一つの『ルーツ』へ

今回The Rootsのライブへ行く前に、「Roots」という言葉から1977年のTVドラマ『ルーツ』も思い出しました。

もちろんThe Rootsというバンド名とドラマ『ルーツ』に直接の由来関係があるという話ではありません。

ただ、一つの言葉を入口に調べていくと、ヒップホップからアメリカ黒人文化、奴隷制度、そして18〜19世紀の服飾史まで繋がっていく。

以前、『ルーツ』を「服」から読み、奴隷制度下の支給服や衣服による身体管理、解放後の装いまで考えた記事を書きました。

→ 『ルーツ』を服から読む——奴隷制度と18〜19世紀アメリカ服飾史

ドラマーは「時間」を作る

ピーター・アースキンとクエストラブ。

前者は変化するジャズの中で時間を支え、後者は反復するヒップホップの中で時間を守る。

方法は違います。

でも共通しているのは、

自分を目立たせることより、バンド全体が気持ちよく演奏できる時間を作っていること。

今回クエストラブを生で観て持ち帰ったのも、派手なテクニックではありませんでした。

タイムを維持する。

小さな音までコントロールする。

必要以上に力まない。

そして、それを必要な時間だけ続けられる身体を持つ。

上手いドラマーとは、何かをたくさん足せる人だけではない。

必要なものを、必要なだけ、必要な時間ずっと出し続けられる人なのかもしれません。

The Roots、本当に最高でした。

THE ROOTS Japan Tour 2026 | Billboard Live

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