–毎日鏡を見るたび、そこには死がうごめいている–
ポイント
・人生はある意味つまらないもの、それをどう偉大にするか
・ある人が興味をそそる人物になるのは専心している時だけ
・芸術作品が残酷に見えるのは現実が残酷だから
フランシス・ベーコン。1909-1992。英国、画家
デイヴィッド・シルヴェスター。1924‐2001年。英国、キュレーター、芸術評論家
20世紀の英国を代表する画家・フランシス・ベーコンのインターヴューをまとめた書籍です。ベーコンの創作思考を知りたいアーティストの方にはもちんおススメです。人生訓も散りばめられているので、アートに興味ある方もぜひ。
生前ベーコン氏の作品、は批評家などの発言により、ベラスケスやゴッホ、マイブリッジ、エイゼンシュタインらのハイ・アートから引用されていると評価されていました。しかし、没後に行われたアトリエの移設・復元によって、スポーツ雑誌やオカルトの本といった、いわばロウ・アートからも着想を得ているといわれています。
ベーコンが絵画を通して表現しようとしたのは、残酷なまでの生々しい現実だったと本書を読めばわかります。写真の登場によってより客観的に現実が切り取られるようになり、画家がより主観的な現実を追求するようになります。ベイコンもその一人で、人間の口の中、牛の肉片などのイメージを使った作品が多く、人が目を背けたくなるような作品を作り出します。強烈な視覚的イメージが彼の作品の特徴となります。「(作品が)好かれるなんて、死刑判決と同じだ。嫌われる方がいい」と語っていますが。私はインノケンティウス十世の作品が一番好きです。教皇の叫びや、教皇と牛肉、強烈なモチーフを使うと思えばそこに無意味そうな矢印や立方も書き込む、見れば見るほど引き込まれていきます。
絵を描くことに行き詰まると、お酒を飲み酩酊状態で書いてみたり、部屋の隅にある埃を集めて絵に塗り付けていたそうです。最初の構成はしっかり意識的に始めるものの、その日その日の偶然に身を委ねることによって絵を仕上げていく話はとても面白く。ベーコンが人生をよりよく楽しむために休息を嫌い貪欲に生きていたことがわかります。
カラーの作品写真は最初の数ページだけですが、モノクロは各章に多くみられます。引用されたマイブリッジの写真などもあり資料的価値も高い一冊です。
「抜粋」
・全否定の気持ちから開き直流ことによって、ようやく描けるようになる
・画家がやるべきことはイメージを通して完成を解放することだけ
・異なる2つのイメージを並べると示唆に富むイメージが得られる
・「みんな肉を食べているくせに、闘牛が残酷だなどどいう。毛皮に身を包み、鳥の羽で頭を飾っておきながら、こぞって闘牛を批判する。」
・心ときめく絶望
・動物とボクサー
・盗めるものは盗む
・感情のバルブを全開にしてくれる絵
・画家になろうと思うなら、物笑いになることを恐れまいと決心しなければならない
・心底夢中になれるテーマを見つける
ご拝読ありがとうございました。
それでは、さようなら。気をつけて:)
著者: デイヴィッドシルヴェスター 翻訳: 小林等 文庫: 308p 出版: ちくま学芸文庫
1回目読了 2018/07/14
コメント
Good post!