カルチュラル・スタディーズ (cultural studies) は、文化一般に関する研究の潮流のこと。政治経済学、社会学、文学理論、メディア論、映画論 、文化人類学 、哲学、芸術史 などの多岐に渡る領域から文化に関わる状況を分析するという学問。文化研究、文化学ともいわれます。
本書はイギリスでカルチュラル・スタディーズ=CSが成立・発展してきた文脈に焦点をあて、その理論と概念、さまざまな領域への影響などをわかりやすく解説した入門書です。私たちが、普段、着ているもの、聞いてるもの、見るもの、食べているもの、他者との関係、家事や料理日常活動全てがCSの関心ごとになります。
前半は、英国におけるCSの成立過程を説明し、後半においてはテクスト、オーディエンス 、エスノグラフィー、イデオロギー 、政治学というお馴染みの様々な側面からその軌跡を辿ります。入門書とはいえ哲学用語が満載なのであらかじめ用語の学習をしておくと理解が進むと思います。
CSの基礎である文化人類学が、大航海時代によるヨーロッパ人の世界位進出によって始まる。19世紀には植民地主義を確立し、20世紀における人類学の発展につながっていく。
1970-80年代に入ると状況が変わり始め、文化人類学において調査する側が調査される側になります。つまり、そもそも文化人類学者自体に異文化を調査し、語る権利はあるのかという素朴な疑問が出てきます。当時の文化人類学の成果は戦争のために使われることが多く、純粋な異文化理解のためではありませんでした。ex. 「 刀と菊」
その頃1970年代の英国バーミンガム大学・現代文化研究センターでCS、通称カルスタが始まります。
狭義の意味においては、大衆文化、メディア、若者文化、移民文化 、サブカルチャーの分析。現在では、文学、社会学 、歴史学 、哲学、文化人類学の横断的な知の実践となっており、若者文化、大衆文化、人種とジェンダーの問題も導入され、ナショナリズム、ポスト植民地主義研究 に影響を与えています。
特に、西洋中心主義的な人文科学に疑問を投げかけ、警鐘を鳴らし、西洋と非西洋の不均衡な権力関係や植民地主義、人権といった問題を文化人類学で徹底的に問い直す動きが活発化していきます。
自分が当たり前のように接している映像、音、身振りなどの背後にあるものが理解できたり、当然だと思われていることに疑問や憤りを感じ、もっとよりよい社会があると信じる人にとってCSは救いになるかもしれません。
1回目読了2021/05/07
ご拝読ありがとうございました。それでは、さようなら。気をつけて:)
著者: グレアムターナー 翻訳: 金智子 出版: 作品社 単行本:347p
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