-人類学史上不朽の記録-
エドワード・エヴァン・エヴァンズ=プリチャード。1902-1973。イギリスの社会人類学者
世界中にはキリスト教・イスラム教・ヒンドゥー教・仏教など沢山の宗教があります。本書は、社会・文化人類学における重要な民族誌と言われ、アフリカの民族の宗教を精細なフィールドワークから体系化し発表したものです。英国人のプリチャード氏は辞書もなく通訳もない状態でヌアー族の村に入ります。そして一年にわたって現地調査をおこないました。
ヌアー族は、アフリカの南スーダンのナイル川支流バハル・アルガザル川、およびソバト川近辺に居住する民族の総です。神と人との関係である彼らの宗教は狭義化されているものではなく、呪術を中心に信仰されています。ある呪術による予言が外れた場合は、他の呪術が邪魔をし失敗したと預言者は説明します。そして彼らはそれを受け入れます。神は至る所にいるが、全ては一つから生まれるとする彼らの宗教的思考は、アニミズムでも多神教でも一神教でもありません。
神に供犠される牛は彼らにとって経済的にも社会的にも重要なものばかりでなく、精神文化の中核でもあります。日本人のお金に対する感覚と近いものを彼らは牛に対して持っています。所々に出てくる彼らの牛の写真は素晴らしく、綺麗に丁寧に削られた牛のツノを見るとヌアー族がどれほど牛を大切に扱っているかがわかります。
下巻を読み進めていくにつれ、ヌアー族の装身具にも話が及びます。身にまとう毛皮や槍、腕輪などのヌアー族の考え方は、非常に個性的でいつか自分のデザインに引用したいと思います。本書は上下巻セットで非常に読み応えがあります。途中、youtubeでヌアー族の当時の映像を見ながら読了しました。
ご拝読ありがとうございました。
それでは、さようなら。気をつけて:)
著者: EEエヴァンズプリチャード 翻訳: 向井元子 文庫: 上345p 下320p 出版: 平凡社
1回目読了 2021/04/20
「メモ」
The Nuer – PREVIEW
煙に包まれた集落をすらっとした手足を持つヌアー族が歩く姿。彼らの親から子へ受け継がれる供犠にも使われる大量の牛は角は研がれているのかどれも鋭く立派、円錐形屋根の家が可愛いらしい。
South Sudan Nuer youth traditional dancing
「ウシ、ヤギ、ヒツジなどの放牧や雑穀類の栽培による生活を営んでいる牧畜民で、雨期には土手などの高台に定着集落を形成する。ヌエル族は経済的価値の基準にウシが利用されており、交換や譲渡を通じた社会関係の構築を行っている。集落は特定の出自集団を核とした血縁関係によって構成され、家族は父系クランの一夫多妻制をとっている。民族全体での政治的統一は無く、文化的共有をなす地域的な部族間での統一が図られている。しばしば部族間での戦闘や抗争が行われるため、これらを調停する役割として司祭職に発達を見た。報復的殺害を良しとしない場合は彼らにより内部調停が計られる。一般的にはこれらの賠償手段としてもウシが用いられる。」
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