-逆の視点から新しい考え方が生まれる-
ポイント
・自由とは、束縛からの解放と孤独の表裏一体
・固定化されている考え方も、逆の視点から考えると新たな発見が生まれる
エーリッヒ・フロム
1900-1980、ドイツの社会心理学、精神分析、哲学の研究者
本書はナチスに追われてアメリカに帰化した著者 #フロム 氏の狂気に対する叫びの書です。自由についてを家族、宗教、社会の中でとらえ、自由という概念がどう変化したかを考察しています。
親、宗教、社会から独立した個人は、自由を手にします。しかし、それは安定した生活と人生の意味を手にするための基盤も同時に失ったことを意味します。もはや重荷となってしまった自由から人間は逃走しようと、二つの方向に進みます。
一方は、さらなる自由の完全な実現のためにユートピア思想に染まる方向へ。他方は、新たな思想や権威にに隷属を求める方向へ。この後者がナチズムに繋がったとフロム氏は分析しています。
自由を求めて戦った人間は、いざ自由を実現すると権威や権力に服従を求めてしまう。なぜ人間は自由を求めながらも同時に自由を手放したくなるのだろうか、とフロムは私たちに問いかけます。たとえ自分は自由な社会に生きていると思っていても、労働や政治からは解放されていないと締めくくっています。
この自由に対する一つの答えが、これから投稿する國分功一郎教授の「暇と退屈の倫理学」にあるかもしれません。人は膨大な暇で退屈な時間が嫌いです。なぜならその時間を有効に使おうと思考しないといけないからです。思考には苦しみを伴います。だからこそ考えなくて済むように過ごそうとします。この問題に対する答えを現代哲学が見出さないといけないと述べています。
この本と本が繋がる瞬間がとっても楽しいですよね。醍醐味。
ご拝読ありがとうございました。それでは、さようなら。気をつけて:)
1回目読了 2011/6/9
著者: エーリッヒ・フロム 翻訳者: 日高六郎 単行本: 337p 出版: 東京創元社
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